極!!モーツァルト塾

自称サックス吹きが音楽について色々と語ります。洋楽多めです。

今更アーティスト紹介 #3 後期XTC編

こんにちは。
21世紀に生きる僕が20世紀から活躍するアーティストを紹介する、今更アーティスト紹介。

第3回は、後期XTC編についてお話ししたいと思います。

スタジオバンドとして華麗なる転身を遂げ、思うがままにポップミュージックを作り続けるXTCですが、後期はそれをさらに進化、発展させたような音楽性になっています。

Skylarking〜天才と天才の奇跡の融合〜

SKYLARKING

SKYLARKING

  • アーティスト:XTC
  • 発売日: 2017/05/05
  • メディア: CD

ポップミュージックメイカーとしてのキャリア順調に積み上げつつある時期の、第八作目。いよいよポップミュージックとしての一つの頂点とも呼べる作品を生み出します。
このアルバムの特徴を表すと純粋、天真爛漫といった感じでしょうか?アニメでいうと、宮崎駿のような世界観です。光のように輝く非常に美しい曲ばかりです。
特にこのアルバムは美メロメイカー、Colinが本領を発揮しています。


1曲目の『Summer’s Cauldron』


2曲目の『Grass』

どちらもふわふわとどこか幻想的な雰囲気をもっており、実際に歌詞もそのような不自然な内容となっております。
そしてこの1曲目と2曲目の繋ぎがもうタマラナイです。是非、アルバムにて通しでお聴きいただきたいと思います。

15曲目の『Dear God』
神を信じないという、ドストレードで過激な内容となっております。哀愁のあるメロディから発せられるAndyの怒りの叫びが聞こえてきます。アルバムの雰囲気からすると、だいぶきな臭い一曲となっております。

全体の完成度はXTCのアルバムの中でもかなり高く、本作を最高傑作と評するファンも多いです。
しかし、Andyは本作の出来に大層不満を持っていたようで、その理由としてプロデューサーであるTodd Rundgrenの存在が挙げられます。Toddもポップミュージックメイカーとしての長年のキャリアがありましたが、音楽性の違いというのでしょうか、ウマが合わなかったようです笑。
実際、度々衝突を起こしていたようで、リリース直後は『Dear God』は除かれていました(後々この曲はアルバムに再収録されました)

確かにこのアルバムはXTCにしてはやけに素直過ぎるんですね。気の抜けたコーラのような感じでしょうか?甘ったるいんですよね。そういった意味ではXTCにおける問題作なのですが、しかし完成度としては非常に高いものばかりなので、是非お聴きいただきたい一作です。

さて、そんな訳で本作に不満を持っていた頑固オヤジことAndyの怒りが爆発するかように、次回作では暴れまくります(このおっさん暴れすぎだろ…)

Oranges & Lemons〜怒りのサイケこうせん〜

ORANGES & LEMONS

ORANGES & LEMONS

  • アーティスト:XTC
  • 発売日: 2017/05/05
  • メディア: CD
のっけからAndyが吠えてます(このおっさん吠えすぎだろ…)。前作の出来に不満を持っていたからか、これが俺たちの音楽なんだ!と言わんばかりにXTC節を見せつけてきます。

1曲目の『Garden of Earthly Delights』。
Andy作。とうとう頭がおかしくなったAndy。
ジャケットの雰囲気ヨロシク怒りのサイケこうせんが、一曲目から展開されています。前作の『Skylarkig』の雰囲気とは真逆で、サイケなイントロが始まったかと思うと、力強いドラム隊とAndyのコーラスが展開されていきます。
歌詞の内容も、「俺たちは地上の楽園で自由に生きるんだ!」といったような内容で、まさに前作の不満を一気にぶちまけるが如くの一曲です。

2曲目の『Mayor Of Simpleton』
Andyが自信を持ってお送りする、捻くれポップの真骨頂です。謎のPVが展開される中、「僕は何もしらない馬鹿。でもこれだけは言える、僕は君のことが好きってこと!」と高らかに歌っているのがとてもシュールです。
「もういいじゃん!全ては愛だよ!愛!」といった感じで半分ヤケクソ気味です。だってAndyだもん。絶対素直なラブソングなんか書かないだろ。
この曲は頑固オヤジが贈る、巷に溢れるラブソングへのアンチテーゼなのでした。

3曲目の『King For A Day』

美メロメイカーColinによる一曲です。
リズミカルなドラム隊の裏でモヤモヤと奏でられるギターが不思議な雰囲気を醸し出しております。そして、音が綺麗。
思うにColinはXTCの良心なのですよね。捻くれ頑固オヤジことAndyの影で、キャッチーな曲を作るColinの存在があったからこそ、XTCは優れたポップミュージックメイカーとして成立しているのだと思います。実際、前作の『Skylarking』はColinの曲が美しい。そんなバランス感覚のもと、このアルバムの完成度は非常に高いレベルに仕上がっていると感じます。

Nonsuch〜爽やかだけど…〜

NONSUCH / CD+DVD-A

NONSUCH / CD+DVD-A

  • アーティスト:XTC
  • 発売日: 2017/05/05
  • メディア: CD

第10作目。前作で不満を全てぶちまけた影響からか、シンプルで爽やかな音作りの曲が多い一作です。恐らく、XTCの中でも聴きやすい部類だと思います。前ニ作の影に隠れがちなアルバムですが、こちらもポップミュージックとしての完成度は高いものとなっております。

1曲目の『The Ballad of Peter Pumpkinhead』
Andy作。ハーモニカとギターが高らかに奏でられる中、Andyが伸び伸びとメロディを歌い上げます。

一方で、その歌詞は非常に切ないもので、真実を語る"かぼちゃ頭のピーター"と、それを非難し排除しようとする社会への皮肉が語られています。ここで登場する"かぼちゃ頭のピーター"はAndy自身を暗示しているのではないかと考えられます。この曲は、捻くれ頑固オヤジの独白なのです。好きな音楽を作りたい、でも社会がそれを許してくれないんだというAndyの葛藤が垣間見えます。

それにしても真実を語るとか言っておきながら、自身のことをそのまま歌詞にするのではなく"かぼちゃ頭のピーター"に置き換えている所が素直じゃなくて面白いです。

6曲目の『The Dissapointed』

Andy作。冒頭にて高らかに歌われるコーラスの後に、爽やかなメロディが流れたと思いきや歌詞は、「がっかりだよ!」というなんだか子どもが駄々こねているみたいな歌詞です。どこまでも素直じゃないおっさんたちです。恐らく売れない曲ばかり、それでも俺たちは音楽を辞めたくないんだ!というXTCからの力強い決意表明なのでしょう。でもレコード会社が〜みたいな失望感でしょうか?そういった意思を感じる一曲でした。

全体的にメロディは爽やかなのですが、歌詞が暗いです。「結局世の中金かよ!やってられねえぜ!」というXTCのぶっちゃけトークが展開されるアルバム、それが『Nonsuch』なのです。

そんなこんなでこのアルバム以降、XTCはしばらくアルバム作りを辞めてしまいます。

実はこの次に、Apple Venus Volume 1とWasp Star (Apple Venus Volume 2) という二枚の連作アルバムが存在するのですが、残念ながらspotifyで公開されておらず、まだ僕も聴いたことがないので今回は割愛させていただきます…

2020年現在、XTCは活動停止状態なのですがいつかまたXTCの新作を聴いてみたいものですね。

関連記事