極!!モーツァルト塾

自称サックス吹きが音楽について色々と語ります。洋楽多めです。

今更アーティスト紹介 #4 Joy Division

気分が乗らない時こそ、暗い曲を聴きたくなるのは僕だけでしょうか?

21世紀に生きる僕が20世期から活躍するアーティストを紹介する、今更アーティスト紹介。第4回は"Joy Division"を紹介したいと思います。

 

1977年に英国マンチェスターで結成。メンバーは、イアン・カーティス(vo)、バーナード・サムナー(g、key)、ピーター・フック(b)、スティーヴン・モリス(ds)。79年、1作目『アンノウン・プレジャーズ』を発表。イアンの重く沈んだ歌声と内省的な詩、孤独感漂うサウンドが、英国の若者の心情をとらえて人気を集める。2作目『クローサー』発表間近、そして初の全米ツアーに出発する前日の80年5月18日、イアンが衝撃的な自殺を遂げバンドは活動を停止(残されたメンバーはニュー・オーダーとして再出発)。2008年5月、彼らの軌跡を綴ったドキュメンタリー映画ジョイ・ディヴィジョン』が公開された。

※下記サイト様より引用
Joy Division - TOWER RECORDS ONLINE

Joy Divisionは活動期間4年、アルバム2枚と活動としては僅かバンドでした。これは、上記の通りボーカルのIan Curtisの自殺によるものなのですが、一方で後に続く"New Order"としての活動に大きく影響を与えた、重要なバンドでもあります。

無機質なドラム、ノイジーなギターにIanの呟くようなボーカル。このバンドはパンク全盛期の70年代後半当時にしては異質なものでした。その音楽性は、後のRadioheadを始めとするオルタナティヴバンドへ影響を与えたとされます。

元々は、後に続くNew Orderを紹介するつもりでした。しかし上記の通りボーカルのIanの死がNew Orderとしての活動、のみならずその音楽性にも影響を与えており、これは触れておかなければと感じたためこちらの記事を書くに至りました。

後ほどNew Orderもご紹介させていただきたいと思いますが、その前にJoy Divisionとしての活動を見ていきたいと思います。

Transmission

Transmission

Transmission

New Orderもそうなのですが、アルバムからのカットではなく、シングル単体で独立している曲が多いのが特徴です。

この曲は、疾走感のあるオーソドックスなロックミュージックで、Joy Divisionの中では比較的聴きやすい部類ではないかと思います。

歌詞の内容も、Joy Division特有の暗い雰囲気が無く、むしろ爽やかでノリの良い一曲となっております。

Unknowns Pleasures

UNKNOWN PLEASURES

UNKNOWN PLEASURES

  • アーティスト:JOY DIVISION
  • 発売日: 2007/12/17
  • メディア: CD

1978年発表のデビューアルバムです。

外側に向かって放出されるようなエネルギッシュなものでなく、内側に向かって収束していくようなイメージでしょうか?独白というか、どこか内省的な雰囲気を持つ曲ばかりなのが特徴です。

とにかく聴けば聴くほど、このアルバムが1978年当時に発表されたことに驚かされます。先ほども申し上げましたがノイジーなギターや無機質なドラムなど非常に先進的なサウンドです。1990年代のオルタナティヴバンドに影響を与えたとありますが、それも頷けるでしょう。


『Disorder』

そういえば、Joy Divisionは所謂"ヘタウマ"と呼ばれることがあります。要するに、演奏力はないけど曲のセンスで勝負する、ということです。

確かに当時の彼らの演奏力が高いかと言われると、そうでない部分があります。例えば妙に軽いドラムであったり、Ianの歌声などなど。しかし不思議なことに、Joy Divisionではそうした"巧くなさ"が独特な世界観を生み出しているのです。

この1曲目がまさにその典型と言えるでしょう。無機質な軽いドラムとIanのまるで呟くような歌声。これがゴリゴリのハードロックとかだったら間違いなくウケないでしょうが、Joy Divisionのダークな世界観ではそれが逆にマッチしているのです。


『She's Lost Control』

6曲目。無機質ドラムの真骨頂。有機的でない、機械的なリズムの裏で囁かれるIanの歌声が特徴的です。この曲はIanが障がい者施設の職員時代に出会った、とある癇癪もちの女性をモチーフにしています。

※下記参照
https://en.m.wikipedia.org/wiki/She%2527s_Lost_Control

Confusion in her eyes that says it all
困惑した彼女の目を見れば全てが分かる
She's lost control
彼女は我を失っている
And she's clinging to the nearest passerby
そして彼女は通りがかりの人にしがみつこうとする
She's lost control
彼女は我を失っている
And she gave away the secrets of her past
彼女は自分の秘密を漏らしてしまう
And said, "I've lost control again"
そしてこう言った「私は自分を抑えられない」と
And a voice that told her when and where to act
その声は彼女にいつどこで行動するかを語りかけていた
She said, "I've lost control again"
彼女は言った「私は自分を抑えられない」

※歌詞は意訳しました

目の前で起きたことを淡々と呟くように歌いあげるIan。メッセージ性の強い曲ですが、ここにはIan自身の感情は描写されていません。ただ、どうしようもなく目の前の現実を見つめることしかできない。そんなIan自身の葛藤が感じられる一曲です。

Love Will Tear Us Apart

Love Will Tear Us Apart (Rmx) [12 inch Analog]

Love Will Tear Us Apart (Rmx) [12 inch Analog]

  • アーティスト:Joy Division
  • 発売日: 2009/07/28
  • メディア: LP Record

Joy Divisionの代表曲として名高い曲です。

哀愁の漂うシンセサイザーにリズミカルなドラムとJoy Divisionの中では珍しいノリの良い曲です。どちらかというと、後のNew Orderに通ずるものがあるかもしれません。

When routine bites hard
退屈な日々に耐えられない
And ambitions are low
気力は下がるばかり
And resentment rides high
怒りは高まっているのに
But emotions won't grow
感情は昂らない
And we're changing our ways
そうして僕たちは自分の道を進むことに決めた
Taking different roads.
別々の道を歩むんだ

Then love, love will tear us apart again.
愛がまた僕たちを引き裂いた
Love, love will tear us apart again.
愛がまた僕たちを引き裂いたんだ

※歌詞は意訳しました

Joy Divisionはとにかく人間の心理描写、とりわけネガティヴな面に焦点を当てた曲が多く、その鋭いナイフのように心を抉る内容が強烈なインパクトをもたらします。

Atmosphere

煌びやかなシンセサイザーと、Ianの囁くような歌声が美しい一曲です。歌詞の内容も、大自然の中をぽつんと1人で歩き、その中で感じられる心情を歌詞にしたような幻想的なものとなっております。

Joy Divisionの中でも特にメロディが美しい一曲で、個人的にこの曲はかなり好きです。

Closer

Closer

Closer

  • アーティスト:Joy Division
  • 発売日: 1999/10/05
  • メディア: CD

2作目にして最後の作品です。前作のノイジーなギターがさらに強調されているとともに、一部曲にてシンセサイザーを用いているのが特徴です。前作同様、一曲一曲にやはり暗い雰囲気が漂います。


『Atrocity Exhibition』

1曲目から独特なリズムのドラムとノイジーなギターが展開されており、「これはただごとじゃないぞ」という気分にさせられます。それもそのはず。タイトルの『Atrocity Exhibition』は、『残虐行為展覧会』という意味だからです。

残虐行為展覧会

残虐行為展覧会

この『残虐行為展覧会』というタイトルは、J.G.バラードの同小説から引用されており、歌詞の内容もかなり過激で凄惨なものとなっております。


This is the way, step inside
こちらへ、中へどうぞ
This is the way, step inside
こちらへ、中へどうぞ

In arenas he kills for a prize
会場の中で彼はほうびのために殺しをやる
Wins a minute to add to his life
彼が少しばかり生き延びる時間を手に入れるため
But the sickness is drowned by cries for more
しかし、気が狂いそうになるこの状況も叫び声によって掻き消される
Pray to God, make it quick, watch him fall
『神に祈れ!』『早く殺せ!』彼が崩れ落ちる

※歌詞は意訳しました

なんかもう1曲目からとんでもないです。グロテスクな曲をのっけから展開させる、まさにJoy Divisionならではの1曲です。
実はこうした内容の曲が後のNew Orderにも見られるのですが、こうしたダークな世界観がJoy Divisionの魅力でもあり、彼らのアイデンティティでもあるのです。


『Isolation』

曲にシンセサイザーが用いられているのが特徴です。延々と繰り返されるドラムの後ろで、不思議な電子音の旋律が聴こえてきます。
無機質なドラムと電子音を背景にするこの曲は、歌というより独白を聴いているような気にさせられます。

Ianが歌いあげる"Isolation"は孤独という意味で、自己嫌悪に陥る1人の人間の苦悩が語られます。

Mother I tried please believe me
母さん信じてよ、僕はやれることをやったんだ
I'm doing the best that I can
僕が出来る限りのことはやってるつもりなんだ
I'm ashamed of the things I've been put through
僕は自分がしてきたことが恥ずかしい
I'm ashamed of the person I am
僕という人間が恥ずかしい

Isolation
孤独だ
Isolation
孤独だ

※歌詞は意訳しました

改めて訳してみると、結構書いてるのもツライです。後のIanの悲劇と同列に語るべきでは無いと思いますが、それでも当時のIanの心情がこれでもかというくらいに感じ取られます。

Joy Divisionはやはり心を抉るような、人間のディープで生々しい感情描写が多いですね。だからこそ、他のロックに無い刹那的でしかし美しい曲ばかりなのだと思います。