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読書感想文 「AI vs.教科書が読めない子どもたち」著:新井紀子

※この記事は、以前のブログにて掲載していたものを加筆、訂正したものになります。

 

新年1発目のネタは読書感想文です。

巷でブームのAIですが、そもそもAIって何?という疑問がきっかけで、本屋で平積みにされていた本書を手に取りました。amazonでもベストセラー書籍となっており、ご存知の方が多いかもしれません。

 

目次

 

そもそもAIって何?

まず本書のレビューの前に、そもそもAIって何?ということをおさらいしておきたいと思います。

AI:Artificial Interigenceとは日本語で人工知能のことですが、本書では「真の意味でのAI」と「AI技術」と区別されています。

何のこっちゃと思いますが、真の意味でのAIとはドラえもんのように、どのような場面でも人間らしい柔軟な振る舞いや思考が出来る人工知能のことを指します。

対してAI技術とは、ある条件でのみ人間と同じか、それ以上の機能を発揮するような人工知能を指しています。

皆さんご存知のように、今はまだドラえもんのような人間らしい柔軟な振る舞いができる人工知能は存在していません。なので、巷では後者の、「ある特定の機能に特化した人工知能」を「AI」と呼んでいます。本書では筆者自身が開発した『東ロボくん』を題材にこれを「AI」として、話を進めています。

 

それでは、本書のレビューに行ってみましょう。

 

AIは人間の言葉を理解できるのか

本書のテーマは大きく分けて以下の2つあります。

 

・AIの現状と限界

・AIに出来ないことは人間に出来るのか

 

本書の前半ではAIに何が出来て、何が出来ないのかについて述べられています。先程もお伝えした通り、今のAIは人間と同じような振る舞いが出来ません。具体的にはAIは人間の「言葉の意味」が理解できません

例えば、「私は先週、山口と広島に行った。」という文を英語に翻訳するとします。ここで、私は山口は人物として入力したとします。

正しい翻訳は、

 

I went to Hiroshima with Yamaguchi last week.

 

となります。

しかし、AIはこのような解答をする事があります。

 

I went to Yamaguchi and Hiroshima last week. 

 

これは「人物」としての山口ではなく、「地名」としての山口の意味での文章になります。つまり、AIは山口さんを「人物」として理解していないことになります。

何故こんなことになるのか、かなりざっくりと説明しますと、AIはまずこの翻訳を行うためにあらかじめインプットした様々な例文とそれに対する答えを参照し、「私は山口と広島に行った」に最も合致する文章を候補に挙げます。その結果、以下の文章が候補に挙がったとします。

 

・I went to Hiroshima with Yamaguchi last week.

・I went to Yamaguchi and Hiroshima last week.

 

我々人間ならば、山口さんが人物と分かっていれば、後者が明らかに間違いだと分かるはずです。しかし、AIは後者を解答に選んでしまう事があります。何故ならば、AIは山口の人物と地名を区別出来ない、つまり山口の意味を理解していないからです。

 

AIは人間の脅威になるのか

AIは文章の意味を理解できないのだから、意味を理解できるということが人間の優位な点のように思えます。本書の後半では、AIに出来ない事は人間はどれだけ出来ているか、という事について述べられています。

具体的には、RSTと呼ばれる読み書きの能力に関するテストを中・高生、大学生、社会人などを対象に行い、AIと比較してどうか、また正答率と個々の読み書きスキルとの相関などについて述べられています。

詳しくは本文をお読み頂きたいのですが、結果としては、AIが苦手とする分野の正答率は人間でも然程変わらない、つまりAIに出来ないことは人間もそれ程出来ていないことが判明しました。このうち、能力値の高い受験者ほどAIを苦手とする分野の正答率が高いことも判明しました。

また、RSTの受験者の高校の能力値と高校の偏差値の相関を調べると、そこには高い相関があることが分かりました。つまり、読解力の高い受験者ほど偏差値の高い高校に入学しているということになります。

これらのことから、読解力はこれからの人生を左右する能力と捉え、来たるべきAI時代に淘汰されない人材作りへの警鐘をもって、本書は締めくくられています。

 

読み終わって〜ツイッターのいいね!ボタンは人間にしか押せない⁈〜

本書を読み終え、AIに淘汰されないようにするには言葉の「意味」を理解する力を養うことが大事だと気付かされる一冊でした。

ふと、思ったのですがAIは物事の意味を理解出来ないのだから、ツイッターでいいね!と思う投稿にいいね!ボタンを押せないんじゃないでしょうか。

これからの時代、意味を理解する力に加えてそういった人間にしかない喜怒哀楽といった感性を養う力というのも大切になっていくのではないでしょうか。

 

 

【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

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